「影を留めず」

2020年10月18日◆菜根譚(さいこんたん)「儒仏道を融合した人生の書」

「影を留めず」

風が起これば竹の葉は騒ぐが、吹きやめば
またもとの静寂にもどる。雁が渡るとき淵は
その影を映すが、飛び去ればもはや影を留
めない。

君子の心も、事が起こればそれに対応し、事
が過ぎればまたもとの静けさにもどるのである。

●「荘子」にこうある。
「至人の心は鏡のようなものである。過ぎ去った
ことにも遠い先のことにも思いわずらうことはなく
来るものはそのまま映し出すが、去ってしまえば
なんの痕跡も留めない。だから、どんなものにも
対応できて、しかも傷つけられることはまったくな
い」

「荘子」にはまた「明鏡止水」という有名なことば
もある。
「人は流水に鑑みるなくして、止水に鑑みる」
流れる水は鏡にならないが、静止した水はいっさ
いの姿を映し出す。この鏡と同じように、なにごと
も虚心に受け入れる境地を「明鏡止水」という。

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